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最後にリプロダクティブ・ヘルスについては、文化的、宗教的な側面についてかなり議論が行われ、ジェンダー、性の問題、生殖、そして健康の問題、性と生殖に関する権利、家族、家族の構造、そして性的な嗜好、男児選好についても討議されました。
もう1つ、北京ならではの特徴は、皆がとても感情豊かに議論しだということです。かなり感情そのものが噴き出たのがこの北京会議ではなかったかと思います。熱気につつまれ、人間の気持ちが自然に出てきたと思います。今までも女性会議が行われましたが、専ら、政治的・行政的な側面に関する討議でした。本当の意味で、女性が女性会議のテーマとなったのは今回が初めてだったと思います。
フィリピン上院のシャハニ議員も過去の会議にも出席されていましたが、たとえばシオニズムの言葉をどのように使うか議論したり、中束戦争の影響が出ていたりなど、女性会議でありながら、政治的・行政的な問題ばかりが今までの会議を占めていたのです。
しかし、この点は北京でかなり変化していました。すべて消えてしまったということではありませんが、北京での議論の中心にあったのはまさに「女性」であったと思います。
’女性”という身近な問題は、人間の感情をいい意味で刺激する問題です。女性の解放、エンパワーメント、そして女性に実力を与えるということは家庭、家族に対する脅威と捉えている人々もいます。それだけに感情も表に出たのではないでしょうか。
変化というものは、とかく脅威の目を持って迎えられるものです。以上、今までの女性会議についてご報告しました。
あらためて社会科学者として見てみますと、北京は2つの世界的な力の衝突の場であり、2つのダイナミックで強力な世界的な力の葛藤の中におかれていたような気がします。一方では、活動的で元気一杯の女性NGOもあり、また、他方で宗教的な原理主義もありました。
宗教的な原理主義で先頭に立ったのが、カトリックとイスラムの原理主義者でした。彼らは過去のカイロで開催されたICPDでも彼らの主張を通すべく頑張り、今度こそ、北京会議では負けてはならぬという意気込みで臨んだわけです。
マスコミも新聞の見出しで刻々と大々的にそれを伝えたように、北京会議では確かに、いろいろ意見の衝突がありましたが、大半の問題について最後には合意を得ることができました。行動綱領最終文案では、400余りの括弧書きの文言があって、それらは保留状態に置かれ、コンセンサスを得られていなかったのですが、最後にはその括弧書き、つまり意見の不一致を取り除くことができました。
特に一番、留保があったのは、やはりリプロダクティブ・ヘルスに関する章でした。しかし、最後には宣言・行動綱領をコンセンサスに基づいて採択することができました。会議参加者には、参加者が一丸となって成しえたという達成感と満足感があった

 

 

 

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